放電加工のFAQ

FAQ

放電加工とは?

柔らかい金属に電気を流すことで刃物のように用いて、硬い金属を加工する方法。

純水や油などの液体の中で、向かい合った金属の間に電気による火花を起こし、その熱で金属を溶かして加工する方法です。液体の中で火花を起こすと、金属の溶けた部分が液体により急激に冷やされ飛散します。残った部分は穴のように窪み、月のクレーターのようになります。このように、火花を断続的に飛ばし、金属の溶解・冷却・飛散を繰り返し金属を加工することを放電加工と呼びます。

放電加工後の表面状態

どんなものの加工に適しているのか?

金型など、通常の刃物では加工が難しい超硬度の金属に最適です。

刃物で一刀両断したり、ドリルで一気に穴を開けたりというわけにはいきませんが、超硬度の金属にも微細で複雑な形状の加工ができます。普通の刃だと、自身の硬さよりも硬い金属は加工できませんが、火花には硬さは関係ありません。

例えば、地球のプレートを大量生産したいときに、その金型を作ります。金型に使われる金属はダイヤモンドに匹敵するほどの硬度になるため、通常のマシニングでは、複雑な形状に加工することは至難の技です。そんな時に放電加工の出番です。

まず、地球の型をした電極を作り、その電極と材料の間で電圧をかけ、放電による火花を起こして、正確に地球の型を加工して行きます。放電は1秒間に1000〜10万回と超短間隔で起こしますが、1回の放電で削れる部分は微々たるものなので、加工スピードはマシニングに比べると遅くなります。

放電加工のプロセス
 

放電加工にはどんな種類があるのか?

型彫(かたぼり)放電加工、ワイヤー放電加工、細穴放電加工の3種類があります。

型彫放電加工

型彫放電加工は、「転写する」加工法と呼ばれています。放電加工の前段階として、加工したいものの形をした電極が必要になります。電極は、銅やグラファイトなどを素材として、マシニングで加工します。

電極と材料の間で、一秒間に1000〜10万回の火花を断続的に飛ばして、電極の形状を金属に彫るように加工します。この時、電極と加工物は直接触れません。これを非接触加工といいます。

  • 電極放電加工の原理1
    加工前

    加工したい形状の電極をマシニングや旋盤を使用し製作します。電極は加工したい形状を考慮に入れて、放電のクリアランスを考えて設計する必要があります。
    工作物は導通性の素材であれば、ステンレス、チタンなどの難削材や超硬などの高硬度材でも加工が可能です。

  • 電極放電加工の原理2
    加工中

    電極にパルス電流を流し数μSという超短時間の間に溶解、爆発を繰り返し徐々にワークを加工していきます。ワークには電極形状の転写された形状が加工されます。
    加工精度は±数μm前後まで出す事が可能です。

  • 電極放電加工の原理3
    加工後

    電極の形状が工作物に彫り込まれました。
    電気エネルギーの強弱と放電加工中に出るスラッジの排出の良し悪しで「加工スピード」「クリアランス」「面粗さ」が変化します。

ワイヤー放電加工

型彫放電加工が、加工のたびに形状に合わせた専用の電極を使用するのに対して、ワイヤー放電加工では、極細のワイヤー(0.05mm〜)を電極として使用します。ワイヤーに電圧をかけて火花を散らし、焼き切るように加工していきます。文字通り、ワイヤーで切ることから、通称ワイヤーカットと呼ばれます。ワイヤーカットも非接触加工です。

工作物とワイヤーは、数十ミクロン(数十μm)の一定の距離を保ちながら両者が接触することなくカットされていきますので、ワイヤーカットの切り代としては、使用するワイヤー線径にもよりますが幅0.4mm程度となり、切削による加工と比べると非常に効率の良い加工です。

  • 電極放電加工の原理1
    加工前

    ガイドでワイヤーに張力を与えます。ワイヤー線には真鍮、亜鉛コーティングされたワイヤー(0.05mm〜)を使用します。
    縁部から加工を始めることもできますが、変形を避ける目的で、工作物内部にスタート穴をあけておきます。

  • 電極放電加工の原理2
    加工中

    ワイヤー線にパルス電流を流し数μSという超短時間の間に溶解、爆発を繰り返し徐々にワークを加工していきます。
    上ガイドと下ガイドを別々に動かすと、テーパー加工や上下異形状が可能となります。加工精度は±数μm前後まで出すことが可能です。

  • 電極放電加工の原理3
    加工後

    完成品ができました。
    電気エネルギーの強弱と放電加工中に出るスラッジの排出の良し悪しで「加工スピード」「クリアランス」「面粗さ」が変化します。

細穴加工

棒状やパイプ状の電極を使用して、長く細い穴を空けることです。航空機、電子部品、医療といった分野で、高品質の加工への需要が高まっており、細穴加工が利用されます。難加工材の加工や、多数穴の加工が可能です。

最小径は0.02mmで、ドリルでは滑って加工できない球面や斜面などへも加工ができます。放電加工と同様に、非接触加工なので、圧力による材料の歪みや変形が起こることはありません。

微細穴加工では、難易度を示す単位として、アスペクト比という言葉を用います。例えば、0.05mm、深さ1mmであれば、アスペクト比は 1÷0.05=20となり、アスペクト比20Dと表現し、 この数値が大きくなるほど難しい加工が難しくなります。

  • 電極放電加工の原理1
    加工前

    電極は、銅、真鍮のφ0.02mm〜のものを用意します。タングステン、タンタル、モリブデン、チタンなどなどの難素材の加工も可能です。

  • 電極放電加工の原理2
    加工中

    通常の放電加工と原理は同じで、電極にバルス電流を流し、短時間の間に溶解と爆発を繰り返して、徐々にワークを加工していきます。

  • 電極放電加工の原理3
    加工後

    ノズル穴加工品ができました。
    電気エネルギーの強弱と放電加工中に出るスラッジの排出の良し悪しで「加工スピード」「クリアランス」「面粗さ」が変化します。

どんな素材を電極として使うのか?

放電加工の電極には、主に銅を使用します。

型彫放電加工の電極には、電気銅(JIS規格:純度99.96%以上)のものが使用されます。電極の消耗率、形状加工性、材料コストなどによって、グラファイトや銅タングステンといった素材も使用します。一方で、ワイヤー放電加工に使用するワイヤーには、黄銅製(真鍮製)で、ワイヤーの太さがφ0.05mm〜φ0.3程度の髪の毛のような極細のワイヤーが使われます。

ところで、工作物が加工される量に対して電極が消耗される割合を電極消耗率と呼び、電極の形状を工作物に転写する上で重要となります。この電極消耗率は「電極と工作物の材質の組合せ」、「印加する電圧の極性」、「火花の持続時間」などにより変化します。

型彫放電加工の電極

加工面が粗くならないか?

表面粗さRa1.5μm前後を出すことができます。

下図は放電加工での加工面の状態です。「放電エネルギーの大小」、「加工スピード」、「加工液の違い」で加工面の状態が変わります。
放電加工でよく言われる1stカットは粗くらいの面粗さとなります。2nd、3rdは仕上げと中粗くらい、4thカットは仕上げ程度の面粗さとなります。通常の仕上げ面の面粗度はRa3~10μm程度です。
(図)型彫放電加工の面粗さ

放電加工の面粗さ

(表)ワイヤーカットの面粗さ

通称 カット 仕上げ面粗さ Ra 肌記号
1stカット 18.0μm
中粗 2stカット 13.0μm ▽▽
3rdカット 10.0μm ▽▽
仕上げ 4thカット 4.0μm ▽▽▽
鏡面 5thカット 1.5μm ▽▽▽▽

加工液はどんなものを使う?

純水または油を使用します。

加工液は絶縁体として機能し、放電が発生するとイオン化して電流が流れる電界を保つ役割を果たします。また、放電ギャップを介して流れる加工液は加工屑をギャップから除去する機能を果たします。

一般的には、型彫放電加工では油、ワイヤーカットでは純水または油を使用することが多いです。最近の水専用のワイヤー加工機も非常に腐食し難くなっていますが、加工時間が長くなると腐食が少し出るようです。

加工液に純水を使用した場合は、加工スピードが速くなりますが表面は粗くなります。油の場合は逆で、加工スピードは遅くなりますが表面状態が綺麗に仕上がります。加工要件に合わせて加工液を選びます。

放電加工の面粗さ

放電ギャップってなに?

放電加工に必要な、適度な隙き間のことです。

電極と工作物の間の隙き間のことを放電ギャップと呼びます(上段図)。電極と工作物が接触した状態(放電ギャップ0)だと、火花は発生せず加工が進行しません。放電加工機は、加工の進行に応じて電極を微細に移動させて、火花の発生に適した放電ギャップになるように電極位置を調整しています。放電ギャップは0.005~1.0mm程度になります。

ワイヤーカットで、工作物がカットされる際の隙き間は下段図のようなイメージです。工作物とワイヤー電極は、狭間隔(0.001〜0.01mm)を保ちながら両者が接触することなくカットされていきます。使用するワイヤー太さにもよりますが、ワイヤーカットの切り代は幅0.1mm〜程度となります。

型彫放電加工の放電ギャップの図
ワイヤーカットの放電ギャップの図

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